2019年4月9日(火) 東京入国管理局
Nさん (南米出身男性)
『昨日は娘の小学校の入学式だった。娘は風邪をひいていて、入学式の後は大変だったみたいだ。
しばらく娘の母親と連絡が取れなくて、娘の状況が分からなくてもどかしかった。彼女の恋人が邪魔をしているのかと思っていたけど、昨日連絡が取れた。今日も電話できそう。どうやら入学の準備とかで忙しかったみたい。
娘が学校でいじめられないかすごく心配している。彼女の行く学校が良い学校か不安。娘とは連絡を取るのが難しいから。
娘に何かあったとしても、自分にはどうしたらいいのか……』
C「フリースクールとかありますよ。それに外国人の多い地域だから、学校もきちんと対応してくれるはず」
心配そうな顔でうなずいていました。
『ここの生活は刑務所みたい。でもこっちの方がつらい。閉じ込められてて、(自分の意志とは関係なく)鍵を閉められてる。まるで動物園に閉じ込められた動物になってしまったように感じる。
シャワーの時とか、ストレスで抜け毛が多い。びっくりするくらい抜けてる。まだ若いのに』
『ヘルニアがある。治療を受けたくてドクターに言っても「まだ緊急じゃないから。出てから治療して」と言われる。じゃあ、いつ出られるの?
他にも、腕に大きなできものがある。医者に診てもらいたくて職員に言ったら、「ふんりゅうでしょう。大したことないから大丈夫」って。同じようなできものが体中にあって、不安だ。
もし本当に大したことがなくても、原因もわからないのは不気味だし、ちゃんと医者に診て欲しい』
服をめくって腕のできものを見せてくれました。目視ですが直径3~4cm、高さは1cm程に見えました。
あのサイズのできものが体中にあるのは不安で仕方ないだろうと思います。
自分でそれが何なのか調べることもできない状況に政府機関によって置かれていて、しかも医療アクセスをその政府機関の職員によって遮られている状況です。
『この生活に疲れた。
面談は嬉しいけど、どうしてこんな目に遭ってるのかわからない。こんな壁越し(面談室に据え付けられているアクリルの壁)に話さなきゃならないのが。
どうせなら良いニュースを話したいけど、ここ(収容所)には何もなくて残念だ』
『外の良いニュースない?』と聞かれたので、統一地方選で反ヘイト議員が数人誕生したことを伝えました。
相模原市議選で、反ヘイト候補の今宮祐貴さんがくじ引きで当選したことを話すと、『ここもくじ引きで出すか決めてるのかな』と。
『(外に出す)基準が分からないのが困る』
『佐々木局長(出入国在留管理庁長官)は、若い頃優しかったらしかったんだけど、今は厳しい人になってるんだって。どうしてそんな風に変わっちゃったのかな…。
佐々木局長に手紙を書いてみたい。(手紙を送れる)連絡先を知りたい』
佐々木局長に送っても本人が手紙を読むのかどうか……。
佐々木局長本人が確実に手紙を読むような方法を探せたら、と個人的には思います。
けど、それがNさんにとって最良の選択肢かはわかりません。
『(収容所の)中で会った人たちと仲良くなったりすることはある。でも辛さは変わらない。
外に出たら、娘とカラオケに行ってみたい。日本語ができなかった頃は、カラオケに誘われて付いて行っても見ているだけだった。楽しそうな様子を見て、それなりに楽しかったけど、今なら日本語が分かるので、自分でも歌えるし、今までよりもっと楽しめると思う。
(面会者に)カラオケ行って遊んだりします?』
『最近は日本の曲も聞くようになりました。愛のストーリーとか、ひまわりの約束とか、BEGINの島唄とか、海の声とか。
これって日本の伝統的な曲なのか、わからないんですけど、涙そうそうも好きです。最近はゆったりした曲が好きみたい』
『外に出たら、やりたいことがいっぱいあります。
これまでは自分で作る料理を食べるのが一番良くて、あまり日本料理は食べたことなかったけど、食べてみたいなって。寿司やたこ焼き、焼きそばを食べてみたい。
自分で作る時は、大体肉料理です。(面会者に)好きな食べ物は何ですか?』
チョラク・メメットさん 男性
#FREEUSHIKU で署名なども行っているトルコ出身のクルド人男性です。
トルコでは少数民族であるクルド人は迫害されており、チョラクさん自身も政治的な活動などが理由で政府から迫害される恐れがあるため、難民条約を批准している日本にたまたまやってきました。
収容所内で体を壊しましたが適切な医療を受けらていない状況です。2019年3月12日から13日にかけて彼を病院に連れて行くことを求める東京入管前での緊急抗議が行われました。
日本各地にある入管の収容所には、同じように心身を破壊された上に、満足な治療を受ける機会も奪われている人が大勢います。
チョラクさんは、自分の足で歩いて面会室に入室なさいましたが、よろよろとおぼつかない足取りで、相変わらず顔色は優れず、声にもまなざしにも力がなく、ため息が多かったです。
『胸が痛い。体のあちこちから痛みが消えない』
C「最近は食事はとれていますか?」
『食事はとれている』
『先週病院へ行った。マツザワ病院(松沢病院)だと思う。「薬が効いたか」とか聞かれた。
ちゃんとした診療ではない。行った先の病院の医者も、ここにきている医者と同一人物だから。まともな診療はしない。血液を採るためだけに連れてく必要ない。そんなのはここでもできること。「病院へ連れて行った」という実積つくりのためだけ』
『同じブロックに、ひとり若い友達がいる。その子が手助けをしてくれている』
『先週、漫画の差し入れありがとうございます。
でも、あんまり読めなくて。最近は集中力がもたない。漫画でも5分くらいしか読めない。集中しようとしても、頭が痛くなって』
『入国管理局は医療体制の形すら整えてない。彼らが言う医療に中身はない。
病気にきちんと対応して、治そうとはしない。病気になったことすら認めない。
結構ひどい、いじめ。どうにもなんないですよ、たぶん……。
こっち(収容所内)に対して、誰も何もできないですよ。死に近い人だったら出せると思う。他は出せない。できるだけいじめて、諦めさせて、ここで死ぬより、向こう(母国)で死んだ方がいいというレベルにならないと、出られない。人が倒れて30分経たないと対応しない。これは死ねってことですよ。
人が倒れたのに、救急車も呼ばないなんて考えられない』
『(収容所の)外のやつ(外国人、外国ルーツの人)外でいじめて、ここのやつここでいじめて……。何を考えてるんだ。それを知りたい。オレをどうしたい。オレの家族、子どもたちをどうする気なのか。日本政府としてどうするつもりなの。
それを知りたい。誰かに説明して欲しい』
O「ご長男の書いた手紙を読みました。お父様やお母様を思いやっている良い子ですね。先週、お子さんたちを見かけた時も、弟さんたちの面倒を一生懸命見ていて……あんな小さな子がこんな苦労をしなくてはいけないのがかわいそうで……」
『手紙、書いたというのは聞いてます。読んではいません。
うちの子はかわいそうではありません。子どもなのに自分の母親の面倒を見なくてはならない、弟たちの面倒を見なくてはならない。両親の心配をしなくちゃならない。それはかわいそうではありません。
子どもはかわいそうではない。かわいそうなのは、子どもをそんな目に遭わせている国です。子どもの面倒も見られない国、子どもを思う心も持たない、子どもに将来ここで生きる希望を見させない国がかわいそうなんです。
ここにいる職員だって悪いわけじゃない。彼らにこんなことをさせているのは法務大臣です。日本がかわいそう。日本の法務大臣がかわいそう。国連子どもの権利委員会がかわいそう。彼らには何もできない。』
『うちの子どもたちは(正式には)日本の「住民」にはなってない。存在しないことになっている子なのに、なぜ公立の学校で受け入れて通わせてるの。場当たり的で整合性のない、汚いやり方ですよ』
『子どもを国がかりでいじめてる。かわいそうな国。そんなことをしているのは、何もできないかわいそうな人間だ。法務大臣は子どもたちに対して何を考えてる。
長男はトルコ生まれだけど、ほとんど日本で育っている。下のふたりの息子は日本で生まれた。みんな日本で生きている子。入管がしているのは、法務大臣のやってるいじめです。入管職員じゃない。法務大臣の命令でここの人たちは動いている』
Zさん(東アジア出身 男性)
リクエストを貰って差し入れたカメラカタログを喜んでくれました。
前回差し入れた無地のノートに描いた絵を見せてくれました。真っ赤に染まる日没のビーチと、以前何かで見かけたのを思い出して描いたという3Dの図形の絵です。
『夜ご飯を半分にしたら寝られるかと思って試してみたけど、変わらなかった。眠れない
実習生だった頃、仕事終わりに毎日ビーチへ寄って、sunsetの写真を撮っていた。それを思い出して描いた。3Dの絵も、どこかでそういう絵の描き方を見たのを思い出して描いてみた。見えます? 朝日(日の出)の写真が欲しいです。ずっと夕日を撮ってたから、外に出たら朝日を撮りたい。富士山から見える朝日も見てみたい。TVでやってるのを見て興味を持った』
『実習生をしてたのは、1年10か月くらい』
『朝は起きたとき、瞑想をしている。15分くらい。(瞑想の時は)意識的に呼吸をしっかりする。そうするとリフレッシュできる。起きた時、何もしないと気持ちは重い』
『困ってること、悪いことは無い。毎日毎日同じで、何も変わっていかない。外に出たい気持ちが一番大きくて、一番大事。窓から外を見ると、そのまま出られたらと思う』
『去年の今の時期は、桜の下で毎日ランチしてた。素晴らしかった。今はできない。その桜を思い出して絵を描きました』
Zさんは、面会室に入ってくるときは表情が硬いですが、絵や写真の話をする時は表情が柔らかくなります。
Pさん(南米出身 女性)
『もう暖房を入れてないから、(収容所の)中は寒いの。でも、外にいる人はもっと大変ね。暖かくなったり寒くなったり。気温の変化が変よ』
『親子面会は月に一度だけど、もっと増えるといいよね。しきりがあるだけで子どもたちには辛いし』
『前に差し入れてくれたCDありがとう。ボサノバ楽しかった。ボサノバ好きなの』
C「中にいて大変なことはありますか?」
『テレホンカードが大変。前は3000円で5000円分のカードを買えて、それは5時間話すことができたんだけど、それはもう売ってない。今は2000円で3000円分のカードを売ってる。でもそれは2時間半しか話せないの。どのカードを売るかとかは、入管ではなくKDDIが決めてるみたい』
『日本で生まれた子に市民権がないって変よね。その子のアイデンティティはどうなるの? 日本で生まれて、共同体に属して育っているのに「外国人」。それはおかしい』
『息子は15になったら日本の戸籍をとれるはずなの。日本で生きていくなら、日本の戸籍をとっておいた方がいいよね』
『子どもの父親は日系三世で、家庭内での会話はスペイン語。だから、子どもたちは日本で育ってるけど親のルーツも(家庭内で)受け継いでる。子どものさらに子どもたちが、この社会でどんなアイデンティティの問題を抱えることになるのかが心配』
『中に、20代前半くらいの東南アジアの子がいて、この子は万引きかなんかで刑務所に入って、入管に送られて、今度母国に帰国するんだって。
でも、この子はずっと日本で育って、ずっとビザを更新しながら日本で生きてて、母国のこと何も知らないの。母国の言葉もわからないし、文化も社会のことも何も知らない。オンリー日本語、オンリー日本文化の子。母国に送るのはかわいそうよ。
父親が小さい頃に死んじゃったんだって。詳しいことは知らないけど。
(そういう話を聞いちゃうと)日本の戸籍をとっておくのが安全かも。
誰だって間違いを犯すけど、間違いを犯したからといって、こんな風に放り出すのは間違ってる』
インタビュー:C
書き起こし:O
文責:C、O